ディーふらぐ! 8巻まで
春野友矢 (メディアファクトリー MFコミックス アライブシリーズ)
まあまあ(10点) 2014年9月7日 ひっちぃ
府上高校で不良をやっているそこそこイケメンで長身の風間堅次だったが、ふとしたことでかかわった「ゲーム制作部」の変人女子たちの異次元的な攻撃に屈服し、なし崩し的に部に入らされて彼女らの個性的なボケにツッコミ続ける日常を送ることになる。ギャグマンガ。
アニメ化されたのを見て、キャラはかわいいけど正直ストーリーやギャグがいまいちだなと思ったのだけど、ヘンなノリでアニメ化しただけでマンガはもっと面白いんじゃないかと思って手にとってみたら、結構忠実にアニメ化されていたことが分かったのだった。
まず題に「ふらぐ」とついているのはきっとコンピュータゲームでよく使われる内部処理用の「フラグ」(特定の条件が成立したかどうかを旗に見立てて立ったか降ろされたかで表現している専門用語)のことで、最近では「死亡フラグ(ある人物が展開上死ぬ前にありがちな行動を取ること)」や「フラグを折った(あの娘から好かれているのにその芽を摘んだ)」のように色々な場所で使われるようになった。「ディーふらぐ!」という題にカッコ入りで「D-FRAGMENTS」とあるので、DはDeathの略でつまり「死亡フラグ」のことを言っているのだと思う。この場合の「死亡フラグ」とは死とは関係なくて、どうやっても避けられない不幸な展開のことを言っているんじゃないかと思う。
そんな題だからコンピュータゲームを作る部活動の話だと思って読んでみると、これがろくに活動していないのだった。舞台となっているゲーム制作部は実はもとのゲーム制作部から抜け出したヒロイン柴崎芦花が仲間を集めてでっちあげたニセモノのほうで、技術もやる気もないので日々ヘンな活動をしている。ゲームを作ったかと思ったらボードゲームでしかも内容が宇宙を舞台にしてエロ本の密輸をするのが目的でしかもこのネタが結構長く引っ張られる。
ストーリーはいくつかのパターンがあって、まず本家ゲーム制作部とニセのゲーム制作部との間の確執が描かれる。本家の方の部長の巨乳の高尾さんと、ニセの方の部長でチビっこの柴崎芦花との戦いと友情なんかがあって、色々あったあとで結局仲直りするものの、主人公の風間くんをめぐって二人がなんとなく争ってる感じになる。といってもこの作品はラブコメと呼べるほど恋愛ものの要素はなく、高尾さんのほうは風間くんを結構意識しているものの俗に言うフラグ折られキャラなので風間くんからは全然相手にされていないという。柴崎芦花のほうは風間くんに対してなんとも微妙な感情をもっていて実は好きなんじゃね的なところを見せていて、一方の風間くんのほうもそんな芦花に対して負けず劣らず微妙な返しをしていて、二人の間に何か特別な関係があるように描かれている。
風間くんは一応不良なので、他の不良グループとか校内を仕切る勢力との戦いの話がいくつかある。本人は真面目に(?)不良やりたいのに、ゲーム制作部の変人女子の面々が謎の強さでもって全力で絡んでくるので茶化されてしまう。
たぶん自分がこの作品をそれほど楽しめていないのは、ゲーム制作部の変人女子やその周辺の面々が、かわいい外見に反してやたら強くておちゃらけている(死語?)からなんじゃないかと思う。中高生ぐらいの頃にこの作品に出会っていたら結構ハマっていたのかもしれないなあ。柴崎芦花があんなにちっちゃくてかわいいのに実は裏番と言われているとか、もうこの設定がいまの自分にはムリだと思った。とりあえず既刊8冊全部読めたのだけど、タマちゃん先輩のグループとの戦いがつまらなすぎて、もうこれ以上読むのをやめようかと思いそうになった。大の男である風間堅次が、高校生の女子たちになすすべもなくやられて捕まって雑な扱いを受けるっていうのは、これがきっとこの作品の面白いところなんだろうけれど、なんか素直に楽しめなかった。読者の側の問題なんだろうか。変人女子連中がちょっと持ち上げられすぎなんじゃないのって思った。一方で「魔の十四楽団」のほうは結構面白かった。この作品に出てくるこわもての男子連中は大体見かけ倒しで全力でボケ倒してくる。
ギャグセンスのほうなのだけど、この作品でよく使われるのは、ストーリー上どうでもいいモブキャラ(エキストラみたいなもん)が過剰に前に出てきてまともな進行を歪めるという感じのギャグで、「魔の十四楽団」なんかもそんな感じ。分類上シュール系だと思う。どうでもいいことを全力でやってるのを見てクスリと笑うような。たぶん人によっては見ていてしらけると思う。主人公がツッコミ体質だと作中で言われているのだけど、読者のほうもツッコミ体質じゃないと楽しめないんじゃないかなあ。
この作品を楽しめるかどうかの分かれ道は、バカバカしさを笑い飛ばせるかどうかと、チート気味の変人女子連中を崇めることができるかどうかだと思う。
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