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世界一簡単な税金の話 嫉妬と国家と長者番付

橘玲 (わしズム Vol.3)

最低(-50点)
2002年10月20日
ひっちぃ

累進課税どころか所得に対して一律に税を課すのはおかしいと主張する過激な文章。同じ公共サービスを受けるのに、人によって税額が異なるのは、憲法に定められた平等の原則に反している、とまで言っている。

作者は橘玲という投資好きっぽい作家。初めて聞く名前なのでよく知らない。

私はこの論を非常にでたらめな暴論だと思う。同じ雑誌の前号に登場したビル・トッテンの考え方とは正反対で、もしかしたら次の号で真っ向から反対する文章が掲載されるかもしれない。私はビル・トッテンの考え方に共感する。

そもそも日本に長者が生まれるには、金を稼ぐシステムが存在しなければならない。治安を維持する警察機構、法律で白黒をつける裁判所、物や人を運搬する公共交通機関や公道。これらは税金で運営されているのだ。ならば、これらのインフラがあってこそ儲けている人々は、税金も多めに納めなければならないのは当然だ。

それを、多数決による富裕者への"搾取”とまで言い切り、のびのびと自分の主張を述べ、当然予想されるべき当たり前の質問に対しての答えとなるべき記述が一切見られないのは、お気楽すぎるというものだ。

長者番付つまり高額所得者名簿の公表がプライバシーに反する、という意見にはまあ多少は納得できないこともないが、「犯罪者並みの扱いでこれを毎回、実名報道しています」といった表現には悪意すら感じる。作者は、税務署が庶民の嫉妬に支えられているのだと説くのだが、では納税額を公開したくない人間の裏には果たして何があるのか。

作者は作家なので、私はこう言いたい。作家の書いた文章が売れるのは、生活に余裕のある人々がいるからなのだと。累進課税どころかフラットな税制をもやめて人頭税にしたら、次に根を上げるのは娯楽業界なのだ。そして儲かるのは高級品を製造・販売している者たちだけになるだろう。そのうち経済規模が小さくなって社会が貧しくなる。

文章の末尾にタックスヘイブンについて書かれた箇所があるが、これも読みすごすことができない。本社だけ税金の低い国に置いて、商売だけ税金が高くて社会インフラの整った国でやろうなんて虫が良すぎる。

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