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To LOVEる -とらぶる- ダークネス 12巻まで

原作:長谷見沙貴 作画:矢吹健太朗 (集英社 ジャンプコミックス)

まあまあ(10点)
2014年12月14日
ひっちぃ

宇宙人の女の子・ララに惚れられた高校生男子・結城梨斗(リト)は、自分が好きなのは同級生の西連寺春菜だからと言って苦しみながらララを拒絶するが、春菜には想いを告げられずにいた。そんな様子を見たララの妹モモは、宇宙では一夫多妻なのだからリトを中心としたハーレムを作ればみんな幸せになれると言ってみんなをくっつけようとする。ちょっとどころじゃなくHになった少年マンガ。

前作から掲載誌をジャンプスクエアという兄弟誌に移してH度がアップし、主人公を真面目なラッキースケベの結城梨斗(リト)から陰謀家で裏表のある少女モモに移したことで、ハーレム化を進めるという明確な意図でストーリーが進むようになった。

この作品はリトを中心に様々な美少女がHなトラブルに巻き込まれることによるサービスシーンがウリだったと思うのだけど、前作は自分にとってはサービスシーンの比重が高すぎてストーリーがつまらなくてそんなに楽しめなかった。しかし今回は、なんでもかんでもサービスシーンに持っていく使命を持っていた(?)天然宇宙少女ララが後ろに引っ込み、頭を使ってハーレム化を推し進めるモモが前に出たことで、自分としてはそこそこ楽しめるようになった。普通に考えても、リトのありえない強運によって偶然ハーレムが出来るような安易な展開よりも、誰かの意図でそういう方向に持っていかれる方が話として順当で受け入れやすい。

絵的にも自分の好みになった。ララは本当に完璧な肉体を持った美少女として描かれていた(と思う)けれど、自分にとっては人造人間っぽく感じられて、もちろんすごくいいのだけど頭のどこかで拒否する自分もいた。モモは個人的にも好みのショートボブでやや未成熟っぽく、小悪魔を絵に描いたようなキャラも相まってとても魅力的に感じた。あと、たぶん多くの人にとってどうでもいいことだろうけど、素足フェチの自分にとって素足が頻繁に出てくるのは非常に良かった。

序盤は謎の転校生で実は生体兵器の黒咲芽亜(メア)が、師ネメシスの命で同じく生体兵器としての使命を忘れて平穏に暮らしている「金色の闇」(ヤミ)を覚醒させようと動くのを阻止する展開になる。「金色の闇」(ヤミ)はかつて銀河中に名の轟く殺し屋の少女だったが、ターゲットであるリトに逆にやさしくされて地球に居座っている。ちょっと面白いのは、モモは早くからメアの危険に気づいて警戒するが、双子の姉ナナはメアと普通に友達になること。ナナは一応モモの姉だけど単細胞キャラで精神年齢もちょっと低い感じ。ただ、メアの二面性が複雑な人間関係になって話を面白くするには至らず、というかメアの性格自体がSFの設定に溺れて意味不明になっていている。こういう重要なキャラが葛藤に苦しむようにするんだったら、もっと普遍的なテーマでたとえば利己性と博愛だとか集団と個人だとか読者にとって共感できるテーマにすればいいのに、SFに逃げてワケの分からないヘンな設定で悩んでポカーンになる。せめて「ダークネス」が何かの隠喩になっていればいいのに、いまのところ何の意味も持っていないように見える。

対立軸といえばそもそもモモのハーレム化に対してリトは葛藤がありながらも一途な愛を目指しているのだから、このあたりを突き詰めればもっと話が面白くなりそうなものなのに、どうしてそれをしないんだろうか。あ、リトもなんだかんだで博愛志向なのかな。じゃあ逆に、モモの敵として「春菜以外はどうだっていいじゃん」的な考え方を持つ黒幕を用意してリトをそそのかせば、リトとモモの意志は微妙に違うけれど博愛で共闘できそうだし、読者にとって身近で大きな問題を扱うことになって良くなりそう。その分、倫理的に道を踏み外しそうだけど。

ちなみにナナはツインテールで貧乳な美少女なのだけど、ストーリー的にも位置づけ的にも中心にいるキャラの割にあまり作者がフィーチャーしていないように思った。なぜだろう。前作での作者のコメントを見ると読者ウケのためならできるかぎりのことをしてきたはずなのだけど、今回は小悪魔系で表裏があって好き嫌いが分かれそうなモモを主人公格にしたのにはなにか意図があるんだろうか。そしてナナのように無邪気なキャラもララ同様に引っ込ませているという。まあモモは、積極的にリトを誘惑する一方で、いざリトが超常現象的な理由により理性を失ってモモと事に及ぼうとしたときには、ちょっと怖くなって及び腰になってしまうというかわいい側面も描いているのがとてもよかった。

「金色の闇」(ヤミ)を教育していた女科学者が新登場する。ヤミを殺人兵器として育てることを拒否したためにヤミのもとを去ることになったことに対して罪悪感を感じており、いまでも自分を許すことができずヤミと距離を置いている。一方のヤミのほうも、母親代わりだった彼女に対して素直に甘えられずにいた。ちょっと登場からの展開が安易すぎるとも思ったけれど、悲哀と母子愛というすごくいいパターンの展開で、簡単には仲良くならないというのもあってよかった。ヤミの殺人兵器としての根は、題にある「ダークネス」の第一義ともなっている。一方で、メアに対する師ネメシスは、引っ張った挙句、突如幼女の姿でリトたちの前に現れて、散々思わせぶりだった彼女の意図が期待していたほどではなくてガッカリした。手薄だった幼女枠はカバーしたけどw

前作の最後ではララがあくまで天真爛漫にリトの西連寺春菜への想いを受け止めていたけれど、今回はちょっと春菜に対して遠慮しているのが良かった。でも春菜もあんまり出番がないのでリトとの関係はなかなか進まない。

雌雄同体で性別が人格ごとコロコロ入れ替わる宇宙人の女性人格ルンが男性人格レンと分かれてしまい、晴れてルンがハーレム候補になったのだけど、これはどうなんだろう。秋元治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」でおかまキャラのマリアが本当に女になっちゃったのは失敗だったんじゃないかという卓見を2ちゃんねるで見たのだけど、それと似たようなことをルンに対して思った。というかそもそも人格が別々すぎるのがいまいちだったと思うので、逆に二つの人格が融合していったほうが面白かったんじゃないだろうか。流行りの「男の娘」の亜流として、男性人格レンとリトが固い友情で結ばれているとかで、リトとルン・レンが混乱するようなバランスだったらもっと魅力的だった気がする。まあせっかくハーレム候補になってアイドルという設定なのにルンにはあまり出番がないので、力を注ぐ気がないのかもしれない。

と色々ケチもつけたけれど、キャラクターもののエロありギャグマンガとしてそこそこ楽しめるので、広く男性読者に勧められるとは思うが、勧めるほどの作品かというと微妙なところだと思う。あと、昔はこの手のジャンルの作品を称して「下手なエロマンガよりもエロい」というのがよく言われていたのだけど、最近は逆に「エロマンガが進化しすぎてヘタなマンガよりも面白くてなおかつエロい」し、一部のエロマンガ家が普通のマンガに進出してきているので、この分野での地位は危ないと思う。

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