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アオハライド アニメ版

監督:吉村愛 原作:咲坂伊緒 (アニメ「アオハライド」製作委員会, Production I.G)

いまいち(-10点)
2014年12月6日
ひっちぃ

男子のことが苦手だった女の子の吉岡双葉は、中学の頃に田中洸という男の子のことが好きで、二人で雨宿り中に会話したりしたけれどうまく好意を伝えられず、そのうち彼は突然転校して姿を消した。高校に入ってからしばらくして、彼は苗字が変わって馬渕洸として吉岡双葉の前に冷めた表情で現れた。少女マンガ原作のアニメ。

原作マンガのことはぜんぜん知らなかったけれど、アニメ化される少女マンガってたいてい面白いのでアニメを見てみたら、微妙な展開が続いたあげく安っぽい展開になって腹が立ったので、時間を無駄にした怒りをぶつけるためにレビューを書くことにした。

最初面白かったのは、主人公の吉岡双葉という女の子がぶりっ子に思われるのを避けるためにあえてガサツなキャラを演じていたところ。わざとくだけた口調でしゃべっていい加減に行動し、心の中では後悔するというのがウケた。

で、中学の頃にぶりっ子だからと同性から嫌われたことがあったので、高校ではかつての自分と同じ理由で嫌われている子と仲良くする。しかしそいつが自分と同じ男の子のことが好きだということが分かって悶々とする。

馬渕洸のことは、再会してしばらくはクールで別人のようだったので、中学の頃の思いはどこかへ行って軽口を叩きあうような仲になったのだけど、時折見せる思いやりに触れてやっぱり自分は彼のことが好きなんだと思うようになっていく。

再会するまでの三年間の間に彼にいったいなにがあったのかというのが一つの鍵となって話が進む。

とまああらすじを紹介しているといい感じなのだけど、アニメの脚本が悪いせいなのか知らないけれど話が雑であきれた。主人公の女の子の吉岡双葉がキャラづけってだけじゃなく本当にガサツで、男の子の馬渕洸がなかなか心を開いてくれないといういらだちをそのまんま彼の兄に対して口にして、それを聞いた兄の方のリアクションも普通ならポカーンと思うだろうにやさしく受け止めてしまう。馬渕洸は夜の街に出かけてがらの悪い友達と付き合っているのだけど学校だと別に不良ってわけじゃない。まあ学校には兄がいて微妙な距離感でやっているからなんだろうけれど、だったら複雑であるはずの胸中がぜんぜん描かれない。そんな彼を見て吉岡双葉は心の中のモヤモヤを解消しようと衝動の赴くままに行動して迷走しては跳ね返されるのだけど、あるときいったいなにが彼の琴線に触れたのかやっと気持ちが届き、あまりに唐突で意味不明なので唖然とした。

少女マンガで本命男の心の黒い部分をヒロインが更生してあげるという流れは定番なのだけど、この作品だと男の傷に焦点が当たっている。これらは同じようでいて少し違う。想定読者の女性層にとって本命男とは力強くなくてはならず、なおかつ自分の助けが必要な存在でなければならない。助けが必要というのは言ってみれば弱さでもあるので力強さとは本来背反してしまう。だからこそ、それをうまくごまかすために後ろ暗い過去みたいなあまり弱さを感じさせない問題点にするのが一般的だったと思う。この作品では男の弱いところを割とはっきり描いている。この作品の本命男である馬渕洸はそんなに力強くないし(弱くもないけど)、分かりやすい長所も見当たらない。それでもそれなりに売れているらしいから、等身大的な狙いが当たったんだろうか。

ヒロインの吉岡双葉のことが最終的に好きになれなかった。最初はガサツキャラを演じているところが面白くて好きになりかけたのだけど、こいつは演じるまでもなく本当に性格が単純だし、悩んでいるように見えてなんだかんだで行動して成功してしまうので飽きてしまった。ガサツキャラを演じているという設定にするんだったら、その設定を活かしてもっと本命男と紆余曲折させればよかったと思うのだけど、もう途中から二人の間の馴れ馴れしい空気が愛情の裏返しとしか思えなくなっちゃったし、本命男に横恋慕する別の女の子もそれを見て半分あきらめちゃうので、話として面白くなくなってしまった。その女の子と主人公もなあなあで浅く仲良しこよしするし。

この作品を一言で言うと浅いってことに尽きると思う。ただ浅いんじゃなくて、一見深そうに見える絶妙な設定っぽいのに浅い。だから余計にガッカリしたんだと思う。

じゃあどうすれば深くなったのかと言われると難しいのだけど、同じクールでやっている八田鮎子「オオカミ少女と黒王子」と比較してみるとこんな感じになると思う。

まずヒロインに関しては、せっかくガサツキャラを演じているという設定なのだから、本来の性格とのギャップにもっと悩んでほしいし、キャラだからと言って安易に思い切った行動をさせるのはやめてほしかった。アドバイスキャラを用意してそいつにけしかけさせるとか。

本命男である馬渕洸の兄が同じ学校の教師なのだけど、本来であれば馬渕洸のことを一番に気に病んでいるはずのこいつが楽観的すぎないだろうか。こいつはもっと自分を責めるべきだし、でなければ後ろ暗さをごまかすようなそぶりをしているべきだと思う。少なくとも馬渕洸のことをおおらかに見守るような出来た人間であるのは歳から言っても物語的に言っても不自然だと思う。

原作を圧縮しすぎているのかもしれないけれど、主人公の女の子の友達連中もすぐ仲良しになっちゃって、常に外敵が少ない状態なのも面白くない。馬渕洸が夜の街で付き合っている不良(?)みたいなやつも、特進クラスで同級生だった元クラスメイトたちも、フワッとしていて薄っぺらいしなあ。馬渕洸の今の姿を肯定する友達みたいな主要キャラを置いて対立軸を作っていたらどうだっただろう。

三十分ぐらいでさっくり書く予定がつい力がこもってしまった。つまらない作品に出会うとなぜ自分が楽しめなかったのか考えたくなってしまう。でもたぶん売れているんだよなあ。かわいそうな男の子をなぐさめたいと思う人が楽しんでいるんだろうか。これ登場人物の性別が正反対だったら自分も喜んで読んでたりする気もする。

(最終更新日: 2014年12月15日 by ひっちぃ)

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