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ユーディのアトリエ 〜グラムナートの錬金術師

ガスト

まあまあ(10点)
2009年2月15日
ひっちぃ

錬金術師ユーディは錬金術で事故を起こして未来の世界に飛ばされてしまう。そこで様々な人と出会い、手助けしてもらい、元の時代に戻ろうとする。材料を集めて色々なものを作りながら冒険を進めていくロールプレイングゲームシリーズの第四弾。

前作「リリーのアトリエ」が非常に面白かったので、いつか続編もプレイしようと思ってから日がたつうちに、中古市場からなくなってしまう恐れが出てきたので慌てて買ってきた。新宿西口の中古屋を三軒と家の近くのブックオフ一軒をまわってようやく買うことができた。第一作と二作目は影も形もなかった。秋葉原にまで出ればあると思うのだけど。

ゲーム内容を紹介していくと、まず未来の世界に飛ばされて途方に暮れている主人公ユーディの前に青年が現れ、当面の生活をサポートしてくれる。ただしこの青年、実は職業が金貸しで、主人公ユーディに高利で金を貸しつけ、定期的に返済を迫りに来る。だからまずは借金の返済が目的となる。

じゃあどうやって金を稼ぐのか。採取地と呼ばれる場所に行き、錬金術の材料となる草花や鉱石などを集めてくる。宿に帰ってからそれらを合成する。宿屋は人々の依頼を仲介していて、何を持ってきたらいくら、という風に常にいくつか品目が並んでいる。最初のうちは合成できるものが限られているので、レシピを入手したり、珍しい材料を手に入れたり、何度も錬金術を使って主人公を成長させなければならない。採取地には敵が出現するので、戦闘して主人公を成長させたり、強力な味方を雇って護衛してもらったりする必要がある。

世界を歩き回っているうちに仲間と出会うことが出来る。金持ちで夢見がちなお嬢様、暗い過去を持つが読書家で前向きな美人剣士、愛する街や村を守る戦士、一攫千金を夢見る盗賊、有名な盗賊一家の娘、宿に出現する幽霊など。彼らは仲間になって冒険を共にしたり(大体の場合は雇うことになるので期間ごとに金が掛かる)、何度も会話を繰り返していくうちにイベントが進んだりする。

そろそろ批評に入る。

今回システムデザインが奥深くなったと同時にラフになったと思う。ひらたく言うとゲームバランスが雑だ。特に、最終ボス(追加要素でさらにボスがいるらしいのだが)を倒した帰りにもうちょっとダンジョンをうろうろしていこうと思っていたらそのあと出現した雑魚敵にたった1ターンちょっとで全滅させられてしまって唖然とした。

戦闘システムに大きな特徴がある。敵にも味方にもHPとMPとLPという三つのパラメータがあり、どれかが0になるとやられる。最初から0の特殊な場合はやられない。普通の敵は大体HPを減らして倒せるが、幽霊みたいな特殊な敵はMPしか持っていなかったりするので、特別な武器や魔法を用意して戦う必要がある。LPは主に毒とか特殊技で減らすことが出来る。これらを考慮しないと、どうしても倒せない敵や非常に苦戦する敵が出てきてしまう。

じゃあどうするか。錬金術か?違う。採取地で鉱石を拾ってきて、それを溶鉱炉のある街に行って溶かしてインゴットにしてもらい、さらに金を払って武器や防具にしてもらう。なぜか錬金術では武器と防具は作れない。アクセサリだけは作れる(難易度が高いのでゲーム後半にならないと作れないが)。

鉱石にも優劣があり、優れた鉱石ほど優れた装備を作ってもらうことができる。さらに鉱石には属性が設定されており、たとえばMP打撃+2とか麻痺耐性なんかがついていたりすると、溶かしたときに出来るインゴットにその性質が残る。だから良い鉱石を手に入れるために何度も採取地に行く必要がある。

前作にあったラフ合成がなくなり、代わりの材料を使ったり材料をケチったり増やして別のアイテムを作ったりといった要素はなくなったが、普通の合成のレシピに融通が利くようになった。たとえば、レシピで「水」が必要だと、井戸水を使ってもいいし、治療薬や毒薬や油や薬剤も材料になってしまう。ただし、何の材料を使ったかによって、合成されるアイテムの性質が異なってくる。たとえば本来は回復薬のはずの同じアイテムにマイナス要素がついたりする。また、品質やレア度の高いアイテムを材料に使うことで、非常に高い効果を持ったアイテムを作ることが出来たりする。この自由度が一部のマニアにウケて本作のやりこみ要素として評価が高かったようである。しかし、この仕組みをよく把握しないで錬金術で合成していると、わけもわからず劣化したアイテムばかり生産してしまうことになる。

草花や食べ物など鮮度がある材料はどんどん腐ったり壊れたりしていく。拠点に置いたコンテナには時間の経過とともにゴミが蓄積されていく。当たり前のことなのだけど悲しい。合成でうまいこと「祝福された」という属性がつくとまったく劣化しなくなるらしい。そのためには、よく使う「中和剤」というアイテムにあらかじめ「祝福された」属性をつけると良い。しかしそもそも「祝福された」属性はなかなか見ないレアな属性であり、その属性のついた材料をうまいこと培養する必要があるとのこと。そうするために、イベントを進めてリザの村の農場を使って時間を掛ける必要があるらしい。あとはゲームが進むと冷蔵庫みたいな倉庫を利用できるようにもなる。

宿屋が仲介する依頼というのが結構割の合わないものが多い。結局、錬金術の合成よりも、単に敵を倒して帰ってくるだけの依頼のほうが稼げてしまう。特に序盤、ロクに合成できるものがない段階ではなおさらである。依頼には締め切り日が設定されているが、カレンダーが独特の暦になっていて非常に分かりにくい(次作で改善されているから多分不評だったのだろう)。

前作に引き続きフルボイスで会話が行われる。今回のヒロインのユーディは、明るくてちょっとドジでお調子者だけどツッコミ体質でもあるという絶妙な設定で、前作に引き続いて好感の持てる主人公だった。声もかわいい。ちょっと古さを感じさせもするけれど。

前作では恋愛要素が結構前に出されていたが、今回は多分友情のほうが前に出ている。女性キャラのほうが仲間として強力だったりする。前作で主人公リリーの助手だったヘルミーナが成人となってちょっと意地の悪いキャラとして出てきたりする。外の世界を知らない深窓の令嬢との友情とか、盗賊一家の娘として生まれたために後ろ指を差され続ける女性、村を救った女剣士など。一方の男は、最初に出てきた高利貸しの男が主人公と良い関係になるのかと思ったがそうはならず(イベントを進めてないからか?)、他にはマッチョとか軽い男なんかが出てくるが影が薄い。

エンディングがちょっと感動する。これは卑怯だよなあ。なにせ主人公ユーディは過去の世界から来ていて、自分の世界に戻ることが目的なので、せっかく仲良くなった人たちと別れなければならない。私がプレイしたときは、深窓の令嬢(ただし性格はほんわか)との別れのシーンが結構感動的だった。

ゲームの序盤はグイグイと引き込まれたが、中盤以降は作業的なことが多くなってダレてきた。質の高い鉱石やその他材料を探すだけのために採取地に入り浸ったり、後半はダンジョンに入り浸ったり、経験値をためて成長させるためだけに何度も繰り返し敵と戦ったり。もうちょっと考えて欲しかった。

本作はまずなによりゲームが好きな人に勧めたい。話を追うだけのロールプレイングゲームが物足りない人。自分の力で色々考えて工夫して進めたい人。ゲームの中の世界でイベントを進めるのを嫌がらない人。そういう人にとってはまさに本作品は良ゲーだと思う。一方、難しいゲームが嫌いだという人には多少勧めづらい。そんなにひどく難しいわけじゃないのだけど。

(最終更新日: 2009年2月15日 by ひっちぃ)

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