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狼と香辛料2

支倉凍砂 絵:文倉十

まあまあ(10点)
2006年8月20日
ひっちぃ

若い商人ロレンスと普段は小娘の形をとる賢狼ホロの北への道中、今回は教会が力を持つ大都市リュビンハイゲンで他の商人に出し抜かれ大ピンチになり、一発逆転を狙って危ない橋を渡る話。

うぶな若いロレンスを500年以上生きた狼神ホロが小娘のなりでからかう中に微妙な機知があるところや、商人の世界での厳しいやり取りの描写がこの作品の魅力だと思う。ただ、本作でそれなりの欠点が浮き彫りになってしまったように感じた。

まずロレンスとホロとの微妙なやり取りなのだが、だんだん底が見えてきたような気がする。読む側の気合も必要なのかもしれない。ロレンスが大失敗してホロと一時気まずくなるシーンで特にそう感じられた。一方で、ロレンスがホロの扱いに慣れてきたと思ったらまだまだだったりするところが面白い。前作の評で書き忘れたが、ホロが嬉しいときに尻尾をわさわささせるという表現がすごく楽しい。

商人同士の熾烈なやり取りは、同郷の商人の頭目や、商館のボスや若頭らとのやりとりが出てくるのだが、前作同様やはり厳しい中に妙になまっちょろいところがあるように思えて気になる。厳しい中に暖かかったりおどけていたりする雰囲気を同居させて魅力的な世界を描きたかったのだと思うが、成功と失敗の境目をうろついているような、読んでいてスッキリしない感じがする。厳しい部分はよく出来ていると思うので、甘さを少し抑えたらバランスがよくなると思う。

そしてこの作品で一番首をかしげたのは、鍵となる人物である羊飼いのノーラ・アレントを最後主人公が信じるシーンがあるのだが、作者による詳しい説明がされていないのもあって私にはよく分からなかった。多分これは引用の愚だと思う。過去の名作を引用することで、物語が成立したかのように錯覚してしまったのではないだろうか。

それでも私がこの作品を好きなのは、魅力的なキャラクターたちが暖かい日常と冒険の時を過ごしているからだと思う。先々の展開にも期待して読み進んだ。設定上このまま話が続いていきそうなので楽しみなシリーズである。

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