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クビシメロマンチスト
大学に入学したばかりの主人公の青年がひさしぶりに大学に来てみたら、閑散とした食堂でいきなり馴れ馴れしくしてくる少女と出会う。人とうまく付き合えない主人公の青年は、そんなこんなで彼女とその仲間たちの誕生日パーティに誘われて参加するが、その後に殺人事件が待っていた。

大人気(?)らしい西尾維新のライトノベル作品、戯言シリーズの二作目。今回は大学生の仲良しグループという閉じた交友関係を描いている。

この作品の一番の核は、三重になっている作品世界だ。

まずは主人公があたりさわりのない単なる人付き合いの悪い若者とした場合の普通の話。この作品は戯言遣いこと主人公「いーちゃん」が一人称で語ることで展開されていく。だから主人公が語りたいように語っている。事件が一通り終わるまでこの調子が続く。

しかし終盤になって解決編になると、主人公の異常性があらわになってくる。少女との夢のようなひとときの会話のシーンが見事にひっくり返る。あっと驚く事件の真相が語られる。素晴らしい。一人称小説で語り手が読者にウソをついたりごまかしたりする手法は、ミステリーという分からないことが分かってきて楽しいジャンルと非常に相性がいいなと思った。

そしてさらに驚くことに、その真相すらも主人公の自己欺瞞(?)であることが別の登場人物によって語られるのだ。まあさすがにこれはほんの少しだけど、それでも人間の精神の奥深さが描かれていて感動する。

主人公の異常性については、導入部の古都を騒がす連続殺人犯との対話によって描かれている。これだけ聞いてもよく分からないと思うが、主人公の青年はものすごい偶然によりサブタイトルにもなっている頭のおかしい連続殺人犯と交友関係を持ち、彼のような人間失格と論理的な会話を交わす。筋の通った異常者は許しても、自己矛盾した正常者は許さない。そんな主人公の異常性がはっきりする。

精神分析学者の岸田秀がサリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」を解説した文章を最近読んだのだが、頭のおかしい主人公が語る小説という点で二つの作品は共通しているようだ。主人公の頭のおかしさをどの程度理解できるかでこの作品を楽しめるかどうか決まると思う。多分このヘンさは多くの女性には理解できないだろうなあ。ミステリーやサスペンスの読者に女性が多いことがこの作品の根源的な欠点だ。私には関係ないことだけど。

私はまだ次の三作目までしかこの戯言シリーズを読んでいないのだが、本シリーズは前作ではなくこの二作目から実質始まっていると言うべきだろう。
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