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明日から中国で社長をやってください。
東大で農学を勉強し大学院を出て博士まで取った女性が、親戚のおじさんのツテで中国の農村部の小さな農業会社で、現地責任者や社長として過ごした体験と考えを語った本。

もとはブログだったらしい。その割に章立てがまとまっているので編集でもしたのだろう。読みやすいのでスイスイ読めた。

私は類書を既に何冊か読んでいるので、この手の本に対して正直いまさら興味は引かれなかった。それでも本書ならではの点として、農業に焦点が当てられているのには関心が向いた。とはいっても、実のところほとんど農業については書かれていない。

日本からは作者一人だけ、あとは全員現地の中国人だ。大卒の幹部が十人ほど、残り三十人ほどは中卒か高卒の肉体労働者で、あと忙しいときだけバイトを雇っていたらしい。中国人ならではの腰の軽さで人を育てた先から流出していったりと、よく言われるようなことが書かれている。

有力者の愛人が幅を利かせているなど、中国における女性の強さというのは意外だった。貧しいからか男も女も働き、しかも家事は男がやっているほうが多いのだとか。作者も最初はオーナーの愛人と思われていたらしい。

製品のサンプルを配ると大変なことになる、という話が面白かった。中国人はサンプルをタダでもらうと次もタダでもらおうとし、製品を買ってくれないのだそうだ。さらにサンプルを現地人営業マンが勝手に売って儲けてポケットに入れてしまう。しかもそんな現地事情を日本の本部に報告しても全然理解してもらえず、現地に適したやり方をさせてもらえないことが多いらしい。

中国がこれから発展するか、という自らへの問いに対して、公害の問題があるから無理、と答えている(断言はしてないけど)。よく言われる貧富の格差も挙げているが、公害を大きな理由に挙げているのは農業の専門家だからだろうか。沿岸地域だけ封鎖すれば確実に発展する、とか。プラザ合意の例を引いて人民元切り上げの可能性にも少し触れているが、考察はどれもあっさりしすぎていて軽い読み物としての色が濃いので物足りない。

ブログだったという偏見もあるかもしれないが、手元にある本はB6版のソフトカバー、この文字の大きさと行間・余白の広さで税込み1,429円というのは割高だろう。今回私は借りたので読んだが、本来ならば読まなかった本だ。この本でしか語られていない体験談や知見といったものはそれほどでもなく、読んで良かったと思うほどのものではなかった。この本のウリは滞在記であることのはずなのだが、滞在記としてのボリュームと魅力に欠けている。

ただ、この作者について言うと、まだ余裕があるように感じられた。もっと面白い体験談とか、まとまっていない知見なんかが、書かれずに頭の中にしまわれているように思った。それか、前著とやら(『世にも不思議な中国人』ワニブックス)と重複した部分を削ってしまったのだろうか。
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