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ふつうの軽音部 6巻まで
和製パンクロック好きでちょっと変わった趣味の女の子・鳩野ちひろは、自分もバンドでギターをやってみたいと思い、軽音楽部に入部する。少年マンガ(?)。

Googleのニュースフィードでこの作品のことを紹介する記事が流れてきたので興味を持ち、読んでみたらすごくおもしろかった。

KAI-YOU 漫画百景 いま読むべき漫画たち #40
次に来るバンド漫画は『ふつうの軽音部』である──傑出した“普通”で描く生々しさ
https://kai-you.net/article/89790

自分が読み始めたときは3巻までしか出ていなくて、紹介するにはちょっと早いかなと思っていたけど、いまは6巻まで出てだいぶ展開も落ち着き、作品の方向性も見えてきたので、ここらで自分もなにか書いておこうと思った。

ヒロインの「はとっち」こと鳩野ちひろは日本史オタクのサブカル系女子で、クラスの中心にはいない地味めな女の子なんだけど、何かやってみては失敗して後悔することを繰り返すぐらいの行動力を持っていた。そんな彼女だから、陽キャが集まると言われている軽音部(軽音楽部)に思い切って入ってみようと思うのだった。

まあ一言で言えば彼女は変人で、空気が読めないところもありつつ、あとで気づいて赤面するぐらいの常識人でもある。がんばり屋で、好きなことは全力でやってみたいタイプ。ちょっとこのキャラは実際に読んでみないとわかりにくいかも。

彼女が好きなのは、andymori、銀杏BOYZ、ナンバーガールといった和製パンクロックだった。

これは自分の偏見なんだけど、この手のパンクロックって演奏が比較的簡単だからバンドやってる人たちにウケているんだと思っている。だってそうじゃなかったら誰だってみんなが知ってる流行りの曲とかをやりたいものなんじゃないだろうか。でも、演奏の敷居が低いジャンルだからこそ、自分たちの思いを伝えたいという熱い人たちの受け皿になり、実際かなり熱い曲が多い。

新入生を勧誘する場で軽音部のパフォーマンスを見たはとっちは、周りのことを考えずに自分たちだけでとても楽しそうに内輪ノリする彼らに若干引きつつも、自分の好きなバンドの曲を熱唱する先輩の姿に引かれ、ちょっと感動する。

それを一緒に見たクラスの女の子とともに軽音部に入部したはとっちだったが、その女の子は中学の頃の友達と一緒に早々にバンドを組んでしまうw 残されたはとっちは、声を掛けてきてくれた見知らぬ背の高い女の子と一緒に、他に余っていた男の子二人とともにバンドを組むのだった。

あんまりストーリーを紹介してしまうとおもしろくないし書くのも面倒なのでいちいち書かないけれど、ここではとっちはいわゆる普通の軽音部らしい洗礼をうけ、ネットリした声で歌う調子のいい男子や、あまり練習したがらない面々、音楽そっちのけでイチャコラする部員の男女を横目に見つつ、新歓ライブで熱唱していたたまき先輩の応援を受けて音楽の道を突き進んでいく。

これをあえて創作で描くか!?ってところがすごいと思う。冴えないバンドものと言えば大槻ケンヂの「グミ・チョコレート・パイン」などいままでいろいろあったと思うけれど、ここまで凡庸な高校の軽音楽部を描いてみせたのはなかなかないと思う。

だったらなにがおもしろいのって話なんだけど、まずは主人公のはとっちではなく一緒に軽音部に入った女の子であるドラマーの内田桃の話が始まる。同じ中学から来た仲良し三人組で組んだバンドはみんなそこそこうまい上に見た目もいいので最初は成功するものの、その中の一人が同じ軽音部の彼氏から別れを切り出され、部をやめると言い出す。陽キャだけどまだ恋愛のことを知らない内田桃はそれが理解できず、三人の仲に亀裂が入っていく。

この内田桃、最初に陰キャのはとっちに気さくに話しかけるなど、明るくてかわいいクラスの中心付近にいるタイプの女の子なんだけど、曲がったことが嫌いで芯の強いところがある。怒ることもあって、そういうところがなんかかわいい。血の通ったキャラって感じがする。

次にその仲良し三人組の一人から彼氏を寝取った(?)藤井彩目の話になる。ギターのうまい彼女は、その彼氏のいるバンドの仲間であり、そいつの愚痴も聞いてやるポジションだった。ざっくばらんに相談に乗っていた彼女だったが、今度は自分がそいつと付き合うことになり舞い上がるのだった。しかしそれも長く続かず…。

こいつは実は小中学生の頃は小太りのいじられキャラで、それを見返すために痩せてギターも猛練習した努力家なのだけど、そのせいかちょっと性格が歪んでいて(!)普段から口が悪いのがウケる。

彼女たちにはそれぞれ抱えているものがあって、それを自分で見つめなおすことになっていく。

そしてそれらを裏で操っていたのが、学年一位の秀才で腹黒女の幸山厘だった。はとっちのバンドでベースを弾き、放課後偶然はとっちの歌を聞いた彼女が、はとっちのためのバンドを結成したいと思い、これというメンバーを集めようとしていたのだった。はとっちのことを神(!)とあがめるほどで、こいつは完全にギャグ要員って感じ。ストーリーも引っ張っていっており、読者人気もはとっちに次いで高かった。

はとっちたちのライバルとなるのが、軽音部をかき乱したその彼氏であり、歌もギターもうまいマッシュヘアのイケメン鷹見項希たちのバンドだった。こいつはあるきっかけでやたらはとっちに絡んでくるようになる。どうやら行方不明の兄と通じるところがあるように感じているみたいなのだった。

登場人物たちがみんな表情豊かでよかった。セリフの無いコマでセリフ外の感情を表情で描いてみせ、心の動きを丁寧に描いている。

4巻では、はとっちがお世話になったたまき先輩がフィーチャーされる。軽音部で副部長をつとめ、クラスの演劇で主演を張るなど、完全無欠に見えた彼女だったが、一緒にバンドをやっていた友達の負の感情に気づけず、知らないうちに傷つけていたことを知る。彼女は決して強い女ではなくて、昔お世話になった女の先生にすがりに行くような弱さも見せる。

5巻あたりで三年生が引退して、二年生の亀屋兄妹と鶴先輩が部長副部長となる新体制となる。亀屋兄妹は能天気な兄がなぜか部長となり、のちに生徒会会長になる鶴先輩が幸山厘に勝るとも劣らない腹黒女かつ愉快犯なので部の人間関係をかき乱そうとする。こういう異常者がストーリーに絡んでくるのは正直あんまり好きじゃないんだけど、幸山厘の敵としてストーリーを引っ張っていくのでどうなるのか気になる。

一方的に悪く描かれるキャラはいなくて、たとえばはとっちのバンドに最初いた調子のいい男子ヨンスは明るいキャラで人を楽しませるところや、友人のために積極的に動くところも描かれる。まあこいつには高校の間は彼女ができないことが作者によって明示されているんだけどw

はとっちの家庭はだらしない父親に愛想をつかして離婚した母親との母子家庭で、たまにその父親が会いに来て気弱にコミュニケーションをとる描写がある。はとっちは最初そんな父親に強い言葉も言っていたけれど、だんだん和解してくるのがしんみりする。安易な感動もののわかりやすい物語じゃなくて、さらっと描かれるのでなんかリアリティがある。普段は別に父親のことなんて考えてないし。

言い忘れていたけれどこの作品の舞台は大阪なのだった。川崎で生まれ育ったはとっちが、おそらく母親の地元である大阪に引っ越したという設定なんだったと思う。そんなにコミュニケーションギャップがあるように見えないのはまだ子供だからか。

はとっちの買うギターがテレキャスターなのがとても渋い。アニメでは「けいおん!」や「ぼっち・ざ・ろっく」のヒロインみたいな丸っこいボディのレスポールが一番人気で、次が定番のストラトキャスターで、ちょっと思い返してみてもテレキャスターを弾いている主人公どころか主要メンバーすら思い出せない。少年誌や青年誌のバンドものにはいるかも。

正直自分はギターにそこまで詳しくはないんだけど、テレキャスターはクランチなサウンドで軽快にコードを鳴らすのが得意なギターという印象がある。弟が昔、中古でサブギターとして買って時々弾いていて、自分もたまに借りて弾いていたのだけど、ちょっと弾きにくいし音も弱くて全然好みじゃなかった。でも、ある種の曲を弾くとすごく映えるし、他のギターでは出せない音を出す。まあエフェクター次第でどうにでもできるんだけど。

はとっちは最初ギタリストを目指していて、次に歌に目覚めるのだけど、やはり自分はギターがうまくなりたいと言っていて、結局どっちなんだと思った。

自分は「けいおん!」や「ぼっち・ざ・ろっく」といった芳文社の萌え系バンドマンガや「BanG Dream!」の中でも萌え系のPoppin’ Partyなんかが素直に楽しめなくて、同じ「BanG Dream!」でもギスギス系(笑)のMyGO!!!!!やAve Mujicaなんかは好きなんだけど、それでもなんかバンドものとしては作り物として楽しんでいたのだけど、この「ふつうの軽音部」は本当に普通の軽音部で起きる特別な青春って感じがしてとても楽しめた。

武道館を目指す人と比べるとちっぽけな夢だけど自分は後夜祭でトリを務めるバンドになりたいみたいなことを言うはとっちの言葉が、年をとったせいか(?)胸に来た。

はとっちの顔がルフィー顔(!)というか高松美咲「スキップとローファー」のヒロインみたいなあっさりしょうゆ顔なので、ぱっと見てもう手に取らない人も多そうなんだけど、とてもおもしろいのでぜひ読んでみてほしい。
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